歳月の欠けた坂道の下り方
三田 洋
久しぶりに便りがあって
二人の旧友とそれぞれ再会してみた
和一くんとは十五年ぶり恵さんとはたぶん十三年ぶりだ
それにしてもこれはほんとにあの人なのか
そっと盗み見してみるが二人ともしっくりしない
埼玉へ引っ越したという恵さんはいつも顎を気にしていた
そういえば以前より尖っているが
まったく気配が違ってしまっている
そのころまだ四十代で子供っぽい目をしていた和一くんも
つかみどころがないほど変わってしまった
何か嬉しいことがあって長い握手をして別れたことがあり
その体験を照合してみるがそんな熱い景色は戻ってこない
歳月は十数年でひとを別人にさせる
怖いような実相がそこにはあった
そしてじぶんもたぶん同じ戸惑いを与えたにちがいない
それではまたいつかと
それぞれ別れたが
どうすればよいのだろう
篤く親しかった人たちはもうどこにもいない
通いなれた夜道もゆがんで
ここをどのように下っていけばよいのだろう
するどく欠けた歳月のほとりを
どのように帰っていけばよいのだろう
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